度胸だめしは軌道に乗った。

 イトウケンジは次の行動を起こした。

 人々の声援に押され、第三弾を開発した。

 巧みな言葉と、複雑なページ構成と、奇抜なスクリプトで、コンテンツはさらに刺激の強い作品となった。




 人々に受け入れられたことで、迷いはなくなった。

 「もっと過激に、もっとびっくりさせたい。」
 
 自由に奇抜なアイデアを形にしていった。

 度胸だめしの開発者として、あるべき姿がそこにあった。




 もっと度胸だめし、最後の度胸だめし、続編を次々と開発した。

 訪問者の数は、月に10万人を超えるようになった。

 「楽しかった。」 「びっくりした。」 「じぇんじぇん怖くなーい。」

 人々が残す言葉に、イトウケンジの顔がほころぶ。




 「決しておごってはダメだ。」とイトウケンジは言う。

 「自分の遊びに人が付き合ってくれる。訪問者が増えるほど謙虚にならなくてはいけない。ありがたいと思わなければならない。そして、自分に出来る恩返しは、もっと楽しいものを作ること。」




 ブラウザはやパソコンは時代と共にどんどん進化し、その都度プログラムやイベントの変更を余儀なくされた。気が付くと10年の月日が経っていた。

 しかし、いまなお人々は度胸だめしに夢中になる。




 「誰もが楽しめるプログラムを作ろう。」

 最初に掲げたスローガンは、今でもイトウケンジの口癖だ。

 ユーモアあふれるジョークサイトの開発の裏には、まじめな開発者の姿があった。
 

 

=取 材=

高橋和幸

 

=デザイン=

吉野俊子

 

=編 集=

大野隆二

 

=協 力=

イトウケンジ

 

=企 画=

上野芳郎

 

 


- 完 -