とあるお宅の玄関の上にツバメが巣を作っていた。姿かたちはすっかり大人に近くなっていたが、顔や目はまだ子どもの幼さが残っていて、とってもかわいい雛たちが五羽も、小さな巣の中に、ギュウギュウにおさまっていた。
ああ、かわいいなぁと思って下を見ると。
ひぇい。ウンチがてんこ盛り。
育ちざかりの五つ子たちが放ったのであろうウンチが山になっているばかりでなく、ドアやら壁やらにまで、ベッタリくっついている。
これはいわゆるフン害ではないか。これらがパリパリに乾燥して、風で舞ったのを吸い込んだりしたら、ぜんそくの原因にもなる。これがハトなどの別の鳥が放ったものであれば、巣は撤去されて、ネットを張られて二度と入れなくされたりするんだけれども。
ツバメだけは、どうしてこんなに優遇されるんだろう。
彼らが営巣して子育てしている間、その家の住人は、ひたすら子育ての邪魔にならないようにひっそりと暮らす。大量のフンについても何一つ文句を言わずに、毎日掃除をして、ツバメの成長を見守る。オレが訪問したお宅なんて、雛たちがビックリするかもしれないからという理由で、玄関を使わずに裏口から出入りしていた。
これが、教育と言うものなんだなぁ。子どものころから「ツバメは縁起物」という価値観の社会に暮らしてきている日本人は、ツバメによる被害を何とも思わないように、教育されているのだ。これほどのフン害を苦痛にすら思わなくなるって、教育ってのはスゴイ。
つまり、教育次第では、たいていの事は耐えられるようになるってことの証明だ。
ゴキブリだって、「ゴキブリは福の神の使い」なんて教育をされていたら、全然平気になっていたはずだ。ギャーギャー騒ぐこともないし、ゴキブリホイホイなどという残酷な装置も作り出されなかったに違いない。
それにしても、カワイイなぁ。
ああ、そうか。ちがうな、これ。
教育とかの問題じゃないわ。
純粋に愛くるしさの問題だったわ。
話をややこしくしてゴメン。
|