交通誘導員。
2011/08/22

 
 道路工事をしている場所で、旗振りで交通誘導をされているところを、徒歩で通り抜けることが、苦手で困る。

 道路工事していたって、どこを通ったらいいかなんてことは、まぁ、見りゃ分かるじゃないですか。でも、仮設の通行帯の入り口あたりに必ず旗振りのおじさんが立っていて、どうぞここからお通り下さいというジェスチャーで、うやうやしく先導してくれる。

 いゃ、そんなに丁寧に教えてくれなくても、分かりますから。オレ、大丈夫ですから。そんなんされたら、通行するのがこっぱずかしいじゃないですか。

 だから、いつもオレは、うつむいて足早に、おじさんの前を通り過ぎる。でも今日は、横目でチラッとおじさんを見てしまって、で、思わず目が合ってしまった。その瞬間、おじさんはニコッと笑顔で、頭を下げてくれて。思わずオレもつられて、ニッコリと笑顔で頭を下げてしまった。

 ああ、挨拶って素晴らしい。

 工事などで道路を占有する場合、工事する場所の交通事情や工事の規模に関わらず、交通誘導員の配置が義務づけられている。

 交通量がほとんどないところや、工事が通行の邪魔になっていない場合など、こんなところには旗振りは必要ないんじゃないのと思う現場でも、もれなくいらっしゃるんですね。あんまり必要がない場所で、あんまり必要ないような仕事をさせられるって、結構キツイと思うんですよね。それなのに、オレが見る限り、どの交通誘導員も、どんな時にも手を抜いていない。たった一人の通行人に対してでも、通行を妨げるものが一切ない場所でも、キビキビと旗を振って交通誘導をする。

 場合によっては、ボディーガードのように、オレの体を何かから守る。

 両手を広げて、自分の体を盾にして、何かからオレを守ってくれる。

 何から守られているのかは、よくわかんないんだけれども。

 とにかく、高いプロ意識というか、志が高いと言うか、その仕事っぷりが気高いんだよな。例えば、負けが決まったレースで、ボロボロにりながらも、ゴールだけはするみたいな。消化試合でも全力投球するみたいな。フェアプレイ精神にあふれ、全力で職務を全うしている。

 それにやっぱり、道路の旗振りは命がけの仕事だ。時々、交通誘導員が通行車両にはねられてしまうというニュースも耳にする。彼らは道路の安全を命がけで守っているんだ。

 今日は、工事日和みたいで、しばらく行くと、また工事の旗振りに出くわしてしまった。ほとんど人通りの無い路地で、通行人といえばオレぐらい。遠くのほうで、オレがやってくるのを発見した旗振りおじさんが、職務を全うするために身構えるのが分かる。ピリッと背筋を伸ばして、紅白の籏を、ギュッと握り締める。そして、数メートルのところまで近づいたあたりで、バッと旗を振って、オレを誘導してくれた。

 ホントは、旗振りおじさんが誘導してくれているその一歩前の道を、オレは曲がりたかったのだが。そんなに、仰々しく誘導してくれるものだから、そこを通らないと何か申し訳ない気がして、誘導されるがままそこを通り抜けた。チクショー、意味もなく遠回りしてしまった。

 ニッコリとお互いに頭を下げ、どーもー、つって。

 ああ、挨拶って素晴らしい。 
 

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