10,000円。
2006/03/15

 
 宝くじが当たった。とは言っても10,000円なのだが。

 宝くじの10,000円の当選と聞くと、まるでどうでもよいカスのような気がしてしまう。しかし、この感覚は危険だ。10,000円は高額なお金だ。10,000円もの金額を軽んじてしまう感覚は、ちょっとマズい。もっと謙虚に、この幸運を喜び感謝しなければならないと思う。

 ありがたや、ありがたや、10,000円。

 例えば、10,000円で何ができるか。
 10,000円あれば、高速バスに乗って青森から東京まで行くことができる。

 おれ、東京へ行って、歌手になりてぇ。

 って、青森のりんご農家の一人息子が、親の反対を押し切って、家出同然で上京するのに必要な金額が、10,000円だ。

 東京への旅立ちの朝、家族が寝ている間に家を出ようとすると、かばんの上に、小さな包みと封筒が置いてある。包みの中には、握ったばかりのおにぎり。封筒の中には手紙とお守りが入っている。

 カズユキへ。
 お父さんは最後まで反対していたけど、本当はカズユキのことを一番心配しています。同封のお守りは、お父さんが、昨夜、氏神様の神主さんに無理を言ってもらってきたものです。お父さん、カズユキの小さな頃の写真を見ながら、「大きくなったなぁ、大きくなったなぁ。」と、何度も何度も言いながら泣いていました。お父さんも、お母さんも、自分の力で歩き始めたカズユキのことを、心から誇らしく思っています。自分で選んだ道なのだから、夢を叶えるために、少々辛いことがあっても、無理をして頑張りなさい。くれぐれも体には気をつけて。母より。

 うわ、泣ける。自分で考えた物語なのに、自分で泣ける。

 ありがたや、ありがたや、10,000円。

 ちょっと真面目な話していいですか。
 この地球上に、予防接種が受けられないために、命を失う5歳未満の子供が、年間200万人以上いるそうだ。子供の命を奪う主な感染症は、はしか、百日咳、結核、ジフテリア、破傷風、ポリオの6種類で、どの病気もワクチン注射で予防できるものだ。つまりワクチンさえあれば、救える命なのだ。

 6つの感染症から子供の命を守る予防ワクチンは、1人分約120円だそうで、10,000円あれば、何と83人もの子供たちの命を救うことができる。

 ありがたや、ありがたや、10,000円。

 まぁ、しかし何だな。こういう話をしてしまうと、宝くじの当選金はユニセフに募金しなければならない雰囲気だな。これだけ色々言って、焼肉とか食べたら、ちょっと人としてアレだよね。よし。募金します。ユニセフに10,000円募金します。 

 ところで、今度の友人のエンドー君が結婚する。
 結婚式は会費制で、その会費が一人10,000円だ。
 や、ゴメン、エンドー君。全然深い意味はないんで気にしないでね。ワクチンとかユニセフとか、色々話したけど忘れて。ワクチンが83人分とか、全然気にしなくていいから。

 ありがたや、ありがたや、10,000円。
 

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