突然のトラブルに見舞われた時、人はパニックになって冷静な行動が出来なくなってしまう場合が多い。後から冷静に考えたら、取るべき行動や対処法がいくらでも思いつくのだが、実際にトラブルの中にいると、何も見えなくなってしまう。
防災グッズや、非常食を用意するなどの備えをするのと同時に、頭の中で具体的にトラブルをシミュレーションして、いざという時、取るべき行動をあらかじめ考えて決めておくことも、トラブルの備えとして大切なことだ。
斯く言うオレはと言うと、地震の時のシミュレーションはとっくに完了している。備え完璧っす。ササッと、机の下にもぐり込みます。一日一回は机の下にもぐるイメージをしている。地震だけでなく、ペンキ塗りたてのベンチにうっかり座ってしまった時や、外国人に道を尋ねられた時や、大人なのにうんこを漏らしてしまった時などなど、様々なトラブル対処の想定が完璧に済んでいる。だからオレはうんこを漏らしても慌てず冷静に行動できるのだ。何処からでもかかって来いや、トラブル。
つい、何度もシミュレーションしてしまうのが、エレベーターに閉じ込められた時や、雪山に取り残されて、雪洞を掘って夜を越さなければならなくなった時のことだな。えっと、美女と。美女と閉じ込められてしまったらどうするか。
こういうときは人の体で温め合うのが一番。つーか、命を守る為には、それしか方法がない。服を脱いで密着するしかないって、いゃー困った。
いつでも来いや、トラブル。
最近、懸命にシミュレーションしているのは、漂流した時のこと。漂流して、無人島に流れ着いたらどうするか。いや、ありえないなどと笑うな。何かの拍子に、無人島に漂流するかも知れないでしょ。ないとは言い切れないでしょ。その時に、オレみたいに色々シミュレーションしていれば、色々スムースにいくってもんです。
無人島に流れ着いた時に、濡れて冷えた体のままで砂浜で、どうしよう、どうしようって、うろたえていたら、あっという間に体力消耗して、くたばっちゃうんだから。色々考えておいたほうがいいよ、ホントに。オレなんて、無人島で歯ブラシなしで、どうやって歯を磨くかということまで、ちゃんと考えている。
ただ、一つだけ決め切れていないことがある。無人島に流れ着いて、何年か経った後に、無事救出されるとする。文明社会に無事戻ることが出来た時、一番最初に何を食べるか。それが問題だ。
おそらく、その時に食べるものは、普段普通に食べるより、何百倍も美味しく感じられるはずなのだ。そして、一生の思い出になるはずなのだ。ならば、普段食べているものの中で、一番美味いと思っているものを、食いたいじゃないか。
焼肉か。
たこ焼きか。
クレームブリュレか。
カレーライスか。
掻き揚げか。
フグか。
ドンペリか。
いや、困った。迷うなぁ。どうしようマジで。
妻の手料理などと言うべきなんだと思うんだけど、何年も漂流している間に、失踪人として取り扱われ、妻が再婚してしまうかもしれない。それなのに、妻の手料理が食べたいなどと言ったら、馬鹿みたいだし、ややこしいことになりそうなので却下。
いや、困った。
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