子供の頃、親にこっぴどく叱られたり、欲しいものを買ってもらえなかった時などに、オレはいつも自分にこう言い聞かせていた。
オレは、ホントはこの家の子供じゃない。
大金持ちの家の子なんだ。
今ここにいるのは何らかの手違いだ。
しかし、誰がどう見ても親子。見た目も、性格も、ケツをかく仕草まで親と瓜二つでありながら、よその子も何もあるわけない。まったく、どんな手違いだ。もう、頭悪すぎの現実逃避。オレって馬鹿な子だったんだなぁ。
でも、まぁ、こう考えたことがあるのは、オレだけではあるまい。
あぁ、あなたもですか、ははは。
お互い、馬鹿な子だったんですな。ははは。
「ホントはよその子シンドローム」、あまりに馬鹿げた発想であるが、実は、悩み事やトラブルを抱えている時の、ストレス回避の思考プロセスとしては、健全で合理的で理想的なものである。
問題を抱えている時に陥りやすいのが、その状況が未来永劫続くのではないかという不安だ。二度とその状況から抜け出せないのではないかと言う恐怖だ。これらの不安や恐怖によって、より一層のストレスが生じてしまう。
大抵の悩みやトラブルは、時間の経過や状況の変化、その人自身の成長などにより、解決したり自然消滅していくものである。こうした先の未来への展望を見出すことが出来れば、トラブルの真っ最中でも気が楽になるし、ストレスも回避しやすい。
「ホントはよその子」の発想は、まさに未来に展望を見出す考え方。ストレス回避の思考プロセスとしては理想的なものなのである。ま、大金持ちが本当に迎えに来るかどうかは別として。
ストレス社会と言われる現代社会。
メンタルヘルスの意識が高まる昨今。
こうしたストレス回避の思考プロセスを、我々大人も積極的に取り入れるべきである。
「オレ、明日、ものすごい大発明を思いつくはず。それが何なのか、今は全く分かんないけど、とにかく明日、大発明だ。大金持ちだぁ。」
「オレ、ホントは宇宙生物。しばらくしたらさなぎになって、一ヵ月後に羽化して、巨大ハエ人間になって、人間とかムシャムシャ食う。覚えてろっ。」
「近い未来、国家の政策とか重要なこととか、人が判断しにくいようなことを、スーパーコンピューターが判断するようになるんすよ。大統領とかも、最もふさわしい人をコンピューターが選ぶんすよ。で、選ばれるの、たぶんオレなんすよぉっ。わーい。」
って。
悩める現代人の皆さん。そんな風に考えてみてください。
ちょっとは気分が楽になりますよ、きっと。
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