今ではその能力を失ってしまったが、昔、オレはちょっとした特殊能力を持っていた。
どんな能力かと言うと、雷予知能力。雷が鳴ることを予知できたのである。雷が発生する5〜6時間前から激しい頭痛に襲われる。独特の痛み方をするので、すぐにそれと分かる。その時、どんなに晴れていてもオレの予知は確実で、数時間後、突然天気が崩れ、雷を伴った雨となる。
天気が崩れても、台風が来ても、雷が鳴らない場合は全く痛まないので、気圧の変化に反応していた訳ではなさそうだ。磁場の乱れに反応していたのだろうか。そのメカニズムをオレなりに色々考えたのだが、原因は結局分からずじまいだ。
それにしても、全く困った能力である。雷が鳴ろうが鳴るまいが、日々の営みに何ら影響があるわけではない。多大な被害を伴うものでもなければ、恩恵に与れるものでもない。少々うるさい程度の、どうでもよい自然現象である。そんなどうでもいいものが予知できたところで、クソの役にもたたない。
痛い分だけ損である。
せめて地震ぐらい予知できていたらな。
地震予知が出来ていたなら、もう、ものすごい待遇で大切にされていたと思う。政府レベルのVIP待遇。シークレットサービスの護衛つき。運転手付きのベンツ。プール付きの豪邸。
もちろん、税金で全部賄われる。
国家の一大事を予測できる訳だから、当然です。オレにもし万が一のことがあったら、国家の大損失。多大な被害が出る。地震予知のできるオレは、それはそれは大切に取り扱われるに違いない。
「イトウケンジさま、お地震の兆候はございませんでしょうか。」
ないよ。
あのさー、足がかゆい。かいて。
「はいっ。かかせていただきます。」
乳首に、ソフトクリームがついちゃった。舐めて。
「はいっ。舐めさせてていただきます。」
うわぁ、地震予知能力っていいなぁ。
いゃ。待てよ。オレは今までの人生の中で、大きな地震を経験していない。だから予知できるか出来ないか、まだ分からないではないか。ひょっとしたら、ホントに地震予知が出来るかもしれない。
いゃ、たぶん出来る。そんな気がする。
オレ、地震予知能力者です。
だから、君たち、オレの乳首を舐めなさい。
|