耳なし芳一。
2004/01/27

 
 
ベイビーちゃん車に乗る。

 買い物に出かけたり、病院に行ったり、嫁の実家に行ったりする時、やむなくベイビーちゃんを車で護送するわけだが、非常に神経を使う。そりゃもう、安全運転だ。安全運転をしていると、あおってくるバカが必ずいる。頼むから追突しないでくれよと祈りつつ、血の気の多いイトウケンジ、ブレーキランプをパカパカやったり、バックフォグランプを点灯したりして、仕返しをしてやる。どうだ参ったか、がははは。

 ベイビーの護送に最適な車は、何と言っても黒塗りベンツだ。フルスモークにして、車高を落としてやれば、あおったり、無理に割り込んでくる奴もいない。日頃はイケイケブイブイのお兄さんも、絶対に道を譲らない意地悪オバハンも、さすがに黒塗りベンツには逆らわない。黒塗りベンツの威圧感は無敵なのだ。
 よし。ベンツ買うか。
 と言いたいところだが、ちょっと無理。

 世のお父さんは、「赤ちゃんが乗っています。」のステッカーで代用するわけだ。頼むから無茶にあおったりしないでくれ、と言う切実な願いを込めて。しかし、あのステッカー、ほとんど意味がない。あのステッカーに気付くのは、同じようにベイビーを持つ親だけだ。バカなドライバーには何の効果もありません。ベンツ効果を期待して「ヤクザが乗っています。」と書いたステッカーを貼ったとしても効果なしだろう。

 ステッカ一枚で相手をビビらせる、もっと威圧感のあるコメントはないものだろうか。

 「殺人犯が乗っています。」
 ダメだな。

 「爆発物を運んでいます。」
 いまいちだな。

 「猛犬注意。」
 だめだ。

 「伝染病に感染しています。」
 ふむ。これはなかなイイね。

 「恨みます。」
 ふむふむ。調子が出てきたね。イイね。

 「呪います。」
 イイね。

 呪います、恨みますと書いていて、最強のデコレーションを思いついてしまった。

 お経だ。

 車のボディに、隅々まで隙間なくびっしり、般若心経の経文を書きまくる。そう、有名な怪談「耳なし芳一(ほういち)」のように。不気味だ。絶対に誰も近寄ってこないだろう。人間は寄せ付けないけど、別のものが集まってきそうだ。落ち武者とか。

 怖っ。

 絶対に忘れてはならないのは、ドアミラーにもきちんと経文を書くということ。さもなくば、落ち武者にドアミラーをちぎって持っていかれる。

 怖っ。
 

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