胡麻。
2004/01/06

 
 ヘソのゴマ。
 ヘソの穴のシワシワの影に隠れている黒い奴。胡麻のような色と形をしているので、ヘソのゴマと呼ばれるが、もちろん、これは胡麻ではない。
 「あれっ、何でこんな所に胡麻が入り込んでいるんだ、一体いつの間に。」と首をかしげた経験がある人もいるかもしれないが、この際、それが間違いであると気付いて欲しい。

 人間の細胞組織は、常に古いものから新しいものに生まれ変わっている。これを新陳代謝という。新陳代謝によって古くなり必要でなくなった皮膚組織が、皮膚の表面から剥離したものが垢である。ヘソのゴマは、いわゆる垢。通常ではなかなか掃除の手が行き届かないヘソのシワの部分に、垢が溜まったものである。

 ヘソも時々は掃除をしてきれいにしてやりたい。しかし、へその部分は他の場所より皮下脂肪が薄く、内臓に近いため、むやみにホジってバイ菌でも入ったら大変な事になるので、取り扱いは慎重にお願いしたい。やさしく掃除してね。

 ちなみに、ヘソのゴマは臭い。

 ホジって、匂いを嗅ぐ。

 ブハッ。

 あまりの臭さに、小躍りするほどうれしくなってしまう。
 やったよっ。臭いよっ。物凄く臭いよっ。
 自分の体から、これほどインパクトのある物質が摘出されると言うのは、快感を伴う。オレって、スゴイっ。心の底から感動をする。

 せっかくだから、この感動を誰かと分かち合いたい。
 愛する妻に、「ほらっ。」と勧めてみた。ところが、逃げ回って、匂いを嗅いでくれない。

 何故だ。

 何故、嗅いでくれないのだ。こんなに臭いのに。「いいから、嗅いでよ、臭いから。早くしないと、匂いがなくなっちゃうよ。」執拗に勧めるが、頑として匂いを嗅がない。

 押し問答の末、やっと匂いを嗅いでくれた。恐る恐る鼻を近づける。

 ブハッ。

 あまりの臭さに、のけぞる妻。
 そんな妻の姿を見て、幸せを感じる。「ね、臭いでしょ。」オレは得意げに胸を張った。

 しかし、冷静に考えてみると、他人のヘソのゴマの匂いなんて嗅ぎたくはないわな。そう気付いたのは、それからしばらく経ってからだ。

 スマナイ、妻。
 

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