飛べっ。
2003/11/25

 
 夢の中では、オレは飛べる。

 空を飛ぶ夢は、未来への飛躍を意味するとか、現実逃避願望の現れだとか、安易なインチキ心理分析の書物などに書かれているが、実際はそんなに単純ではない。
 その夢が、何を象徴しているかは、その人によって違う。夢で見た事が、その人にとってどういう対象であるか、どのように感じている事か、その人がそれから何を連想するかなどを細かく聞き取り、系統立て考えなければ、夢による心理分析などは出来ないのだ。
 皆さんが目にする夢分析の書物の多くは、あくまで娯楽。占いの範疇なのだ。
 今回は、夢分析には触れない。オレの心理分析をしたところで、大して面白くもないだろうし。

 今回のテーマは飛ぶということだ。

 夢の中で、オレがどのように飛んでいるかというと、空中を泳ぐ感じ。
 平泳ぎだ。
 空中で平泳ぎをすると、体が宙を進む。
 ちょっと気を緩めると、墜落するので、シャコシャコとすばやく手足を動かす。

 急いで向きを変えたい時とか、地面に落ちそうな時は。
 そりゃあもう、ものすごく素早い平泳ぎ。
 手足をこれでもかと言うぐらいジタバタさせなければならない。

 せっかく、何でも自分の思いのままに出来る夢の中なのだから、スーパーマンとか、鉄腕アトムみたいに、カッコ良く飛べばいいのに、シャコシャコ、ジタバタ。
 あまりに無様な飛びスタイルで、とても人前では飛べない。

 ホントのこと言うと、現実世界でも飛べる気がするのよ。

 今まで、「人間は飛べない。」という固定概念に縛られていただけかもしれない。偉大なる発明や発見は、固定概念を打ち破ることから始まっている。夢の中でのオレの飛びは、なかなかリアルだった。同じようにやれば飛べるかもしれない。
 いゃ、飛べるさ。
 きっと、飛べるさ。

 しかしだ。仮に飛べたとしても、飛ぶ姿を誰かに見られたらどうするよ。

 「イトウさんとこの御主人、この間、飛んでたわよ。」
 「見た見た。二階の屋根の辺りで、バタバタともがいているから、何かと思ったわよ。」
 「みっともないわよね。」
 「いくら飛べるからって、あれじゃあねぇ。」

 そんな訳で、本当に飛べるかどうか、試す事が出来ない。
 飛べるかもしれないのに。
 あの夢は正夢かもしれないのに。

 それに、もし飛べなかったらどうする。

 「イトウさんの御主人、この間、地面にはいつくばって、ジタバタしてたわよ。」
 「気持ち悪いわね。」
 「変なもの食べて、気でも狂ったのかしらね。」
 「目を合わせたら、ダメよ。」

 やっぱり試せないよ。
 本当は飛べるかもしれないのに。
 

Produced by 110kz.com

Sponsor Site