靴下。
2003/09/30

 
 そう言えば、最近、靴下に穴って開かなくなったよな。

 一昔前なら、履き古した靴下なんて、必ず穴が開いて、そこから親指がポッコリ顔を出したりしていたものだ。
 洗濯物をためているせいで、穴の開いた靴下しか見当たらず、「今日は人前で靴を脱がないからいいかな。」と思って穴開き靴下で外出したものの、そんな日に限って座敷に案内されたりして。
 落書き好きのオレは、マジックで足の親指に、顔を書いたりする。
 穴なんて開いていたら、もう大変。
 親指君こんにちは。

 ところが最近の靴下ときたら、穴が開かない。長く履いた靴下はヨレヨレになるだけなのだ。技術革新はこんなところにも及んでいるとは、驚きである。

 現代人は、とかく日進月歩するハイテク産業の技術革新に目を奪われがちである。

 パソコンのCPUがグレードアップしたとか、ウィンドウズが新しくなったとか、メモリを増設したとか、ぎゃあぎゃあうるさい奴。どうせエロい画像とか動画とかしか見ないんだから、関係ないだろ。
 新型の携帯電話が出たとか言って、次々と機種変更する奴。どうせお前には電話もメールも来ないんだから関係ないだろ。
 新型の自動車が出るたびに、やれ馬力がどうとか、トルクがどうとか、空力がどうとか言っている奴。日本の道路は60Km/hが制限速度だバカヤロー。

 そんなことより、靴下だろ。

 靴下だってアップグレードしているんだぞ。
 技術革新は、我々の生活の身近なところにも恩恵を及ぼしていることを、声を大にして言いたい。

 どこかのハイテクな研究室の中で、靴下の穴を防ぐ技術が研究に研究を重ねて、血のにじむような努力を重ねて開発されていたに違いない。
 どの部分に、どのような力がかかるのか。
 力がかかる部分に、どのような補強を入れるべきなのか。
 快適さを失わないで、補強をするためにベストな繊維密度はどれぐらいか。
 どの角度で繊維を縫合すれば、より強度が出せるのか。

 地道で真面目な研究の末に、ついに靴下に穴は開かなくなった。
 ありがとう博士。
 さようなら親指君。

 地味で、誰も気付かない革新だけど。
 ノーベル賞とか絶対に貰えないだろうけど。
 靴下の売上が落ちてしまって、自分の首を締める結果になっただろうけど。
 靴下はやっぱり臭いけど。
 あなたの偉大な研究は、人類の宝です。

 ルーズソックスで儲けた莫大な資金で、研究に打ち込んだことは内緒にしておきますから。
 

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