覆面のプロレスラーが県会議員に当選した。いい年をしたおっさんが、県民を代表する立場に立っても、「覆面は取りたくないっ。」と駄々をこねている姿はどうかと思うが、「覆面を取れっ。」と目を三角にしている他の議員さんもどうかと思う。騒ぎ立てるマスコミもしかり。くだらないことで時間を消費するなと言いたい。阿保は放っておくに限る。
ところで、この覆面。ぜひかぶって欲しい人達がいる。
頭頂部のハゲを、側頭部の髪の毛を無理やり乗せて隠そうとしているおじさん。毎日育毛剤を、せっせと頭にふっているおじさん。カツラ屋さんに電話しようかどうしようか、毎日悩んでいるお兄さん。
彼等には覆面をそっと手渡してあげたい。その時、彼等は戸惑ってオレに何か言おうとするだろう。オレは黙ってにっこり微笑んで、うなずいてあげるのだ。
覆面があればハゲなんて怖くないのだ。
いや、ハゲの人だけでなく、他の人たちにとっても、覆面は使えるアイテムだ。
覆面があれば、寝癖は直さなくてもいいし、ヒゲもそらなくてもいい。オレの大嫌いな散髪も、適当に自分でやってしまえばいい。
女性においては、朝の貴重な時間を化粧で費やす必要はなくなる。日焼けも気にせずに外を歩ける。殿方と一夜を過ごした翌朝、悲惨な素顔をさらす心配もなくなる。
人を判断する材料として、顔の造作の良し悪しは大きな幅を占めてしまうが、覆面があれば、人間性そのもので勝負できる世の中になる。
覆面って素晴らしい。覆面を世間に広めたい。
覆面と言うから、イメージが悪い。これは服です。頭に着る服です。そうだ。顔シャツと呼ぶことにしよう。
何事も先進的なオレだ。早速、顔シャツを着ることにした。実はオレは顔シャツを持っているのだ。一度も着たことなかったけど。以前、作業服の専門店「ワークマン」で、冗談で顔シャツを買ったことを思い出したのだ。
頭を丸ごとすっぽり包み込む毛糸の帽子をイメージして欲しい。で、目と口のところに丸い穴があいていて、その穴は赤く縁取りされている。
テレビのドラマとかの銀行強盗がよく使う顔シャツだ。
フムフム。なかなか暖かくていい感じ。
眼鏡が上手にかけられないけど。
無理やりかけたらレンズがやたら息で曇るけど。
五分もかぶっていると、頭のあちこちかゆくなってくるけど。
やたら蒸れて、湿っぽくなるけど。
激しく怪しく見えるけど。
顔シャツ最高っ!!
って、そんな訳ねぇだろっ。
あんなもの、被っていられるかっ、つーの。
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