秘密基地。
2003/03/01

  
 ところで、オレは狭いところが好きだ。
 押入れの中とか、跳び箱の中とか、納屋の屋根裏とか。

 人が入ることを想定していない狭い空間に、体をもぐりこませ、そこにたたずむことは、実に快感なのである。そこで何をするわけではないが、最高の遊びである。わざわざそんな所で、意味もなく、お菓子を食べたり、お茶を飲んだりする。最高です。想像するだけでワクワクしてくる。これほど贅沢なことはないです。

 心理学者に言わせれば、「これは一種の母体回帰欲求なのだ。」とか「性行為への欲求が変化し表現化したものだ」とか小難しい理屈をこねるだろうが、オレにとってはどうでもいい。とにかく好きなものは好きなのだ。

 オレが好む狭い場所には条件がある。
 まずは、薄暗いこと。密閉された空間であること。
 外から見て中に人が入っていることが分からないこと。
 座ることが出来ること。
 無理なくモゾモゾと体を動かせるだけの余裕があること。

 これらの条件を満たした場所を、昔はあちこちにキープしていた。オレしか知らない狭い場所。つまり、オレしか入ることのない、オレ専用の狭い場所だ。いわゆる秘密基地だ。

 今、ふと気づいたのだが、その秘密基地をすべて、オレは失っている。

 なんてことだ。

 部活とか、受験とか、学生生活とか、サークル活動とか、恋だとかセックスだとか、就職だとか仕事だとか、結婚だとか家庭だとか、そんなくだらないものに夢中になって、秘密基地のパトロールを怠っていた。

 父さん、僕は馬鹿でした。

 ところが先日、街で驚くべき光景を目の当たりにした。今や街は秘密基地だらけではないか。公園や、ガード下は秘密基地の住宅展示場と化している。空前絶後の秘密基地ブームだったとは。
 お、オレも混ぜてくれ。

 雇用対策ちゃんとしろよ。日本政府。
  

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