ペンキ塗りたて。
2001/09/06

 
 「ペンキ塗りたて」の張り紙を見付けた。思わず歩み寄って、指でチョンと触ってみる。案の定、塗料が指に付いた。

 思わず「ムフッ」となった。
 妙に納得したと言うか、ちょっぴりうれしいと言うか、何だか満たされた幸福感である。思わぬところに幸せと言うのは転がっているものである。

 少しは離れて眺めていると、通りかかる人のほとんどが、張り紙を見つけると、吸い込まれるように近寄ってきて、おずおずと指で触るのである。そして、塗料の付いた指を眺めて「ムフッ」となっている。ウンウンと一人でうなずいている人もいた。

 「ペンキ塗りたて」という警告を目にすると、ムクムクと好奇心が沸いてくる。「ふふーん。ホントかな。実はウソだったりしてぇー。」とワクワクしながら触ってみる。で指に塗料が付くと「やっぱりホントだったのね。」「ムフッ」となるわけである。

 実にアホな心理メカニズムであるが、「ペンキ塗り立て」の張り紙とペンキ塗り立ての建造物は、人々に幸福を与える代物だったのである。
 これは、どちらかが欠けていれば、幸福を与えるどころか、逆に不愉快にさせてしまうだろう。二つがそろって初めて人々を幸福にするアイテムとなるのである。
 幸福とは微妙なのだ。

 たとえば、「青汁」が大ヒットしたのも同じメカニズムである。「青汁」も世の人々に幸福を与えている。
 あれを「うまい、もう一杯。」とコマーシャルしていたら、「何じゃコラー、めちゃめちゃまずいやんけ、このヤロー」となって、誰もが不幸になり、大ヒットもなかったのである。
 「まずいっ。もう一杯」と言われるものだから、「えっ、まずいの。ホントに?ど、どんなふうにまずいのかな、」ってな具合に好奇心があおられる。
 そして、実際にまずい。
 「ムフッ」

 実は、このオレも人々を幸せに出来るキーワードとアイテムを持っている。

 「オレの足は、そりゃーもう、ものすごく臭いぞ。」
 

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