突然だが、マンホールを思い浮かべてほしい。
どうだろう、イメージできただろうか。
あなたがイメージしたマンホールとはどんなものだろう。おそらく、茶色もしくは黒い、丸い鉄製のふた、を思い出したはずだ。あるいは、丸い鉄のふたが道路に点在している図かもしれない。
しかしだ、そいつは、あくまでもマンホールの「ふた」であって、マンホールではない。マンホールとは、鉄製の丸い「ふた」の下にあるであろう、「穴」のことである。
穴そのものをイメージした人はおそらくいないだろう。実際に、マンホールを見たことがある人も、そんなには、いないのではないだろうか。
実は、オレも見たことがない。
それなのに、何の疑いもなく、マンホールのふたの下には穴があると思っている。
実際に見たことがないのに、穴があると信じて疑わない。微塵の疑問も感じない。我々はあまりにマンホールに対して無知だ。無頓着だ。根拠のない確信。これは非常に危険だ。 ひょっとしたら、穴など存在していないかも知れないのだ。国家の陰謀で「そう思い込まされているだけ」かも知れないのだ。
マンホールのふたを開けると秘密基地があるかもしれない。
エスパー伊東の家かもしれない。
「マンホールのふたを開けると、そこは雪国だった。」かもしれない。
いずれも、ないとは言い切れないのだ。オレたちは見て確認したわけではない。その可能性は否定できない。
何が隠されているにせよ、何かを隠ぺいする方法としては、実に巧妙なやり口である。
「これは穴だ。」と言われれば、誰も興味を示さないし、疑うことすら忘れてしまう。これが「非常ボタン」であったら、完全にダメだ。「非常ボタン」はとても魅力的で好奇心をそそる。
「穴だと思い込ませることにしよう」と決めた奴は、恐ろしく頭が切れる。これはやはり国家機密だ。国家の陰謀だ。国家レベルとなると、やはりすごいことを考える。
完全に裏をかかれた。
よりにもよって「穴」とは。
こんな風に、事実とは違うことが、常識として浸透している、あるいは信じ込まされていることが、他にも沢山あるはずである。
自動販売機の中には、ちっちゃいオッサンが入っているかも。
地球は四角いかも。
猫は、本当は喋れるかも。
高度に操作された情報社会なのだ、オレたちが生きているのは。本当に気をつけなければならない。
オレって、本当は、空を自由に飛べるかも。
いゃ、さすがにそれはないか。
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